スポーツチャンバラ 田邊哲人会長のインタビュー
インタビュー記事No.14
「 基本動作一級審判検定 」

田邊哲人会長

基本動作審判制度が改定されました。その経緯は?


  大会に引率して来るご父兄の中には、基本動作の試合をビデオ撮影して、それを自宅の家族団らんの場で、家族のコミュニケーションとして活用している方々もいるのです。これはどの家庭でも日常の風景でありましょう。とにかく一生懸命に我が子と共に勉強し、我が子の成長を見ているのですね。それらの中にはビデオが擦り切れるほど見て、「○○ちゃん、ここがいけなかったね」また、「○○ちゃん、この姿勢が良くないね」などという親子の会話があるのでしょう。その内に徐々に基本動作を見る目ができてきて、偏った判定をする審判や、大会の時にしか審判をしない人よりも目が優れてくる場合もあるのでしょう。
審判の心構えとして、ルールブック2「公認審判員規定」の22頁にも次のようにあります。


「審判の心構えと判断の考察」 ( ルールブック2 「公認審判員規定」の22ページ)
2.審判の心構え
  審判の判定は、スポチャンの進む方向を示す重要な役割がある。したがって、とくにその責任が重い。厳正な態度はもとより、試合者と同一の動き、同一の目、同一の心で試合者が納得し、観衆が満足する審判を行い、信頼されることが極めて重要である。


  この様に、選手は元より、見ている人達にも信頼されることが審判として重要なことなのです。

  現行の基本動作審判は、3人編成での多数決で決定していました。多数決とはいかにも民主主義的で公平の様に聞こえますが、それは十分に「目の眼」が備わった審判団に言えることで、まちまち、さまざま、俺が俺がの審判員が集まっては必ずしも正確な答えが出るとは限りません。
  と言うのは、現行の基本動作審判員は、地方に於いて、またその道場に於いて決定審査された者を「みなし合格」として本部が認定書を発行していたのでありますが、それは地方大会などローカル大会等で審判などに参加し、実技教育としての目を錬磨、習熟して頂けるという事を予定して認定してきたわけであります。当然として実践において審判実技を行う訳でありますから、徐々に目利きになって然るべきと思っていましたがやや意に反し、昨今、観衆からも疑問の声が出る判定や、他の審判員から不満が出る判定が、たまさか見受けられるようになりました。それらはやがて基本動作競技の進む方向すら阻害することとなります。 正しく目合わせすることがなかった今までの審判は、見る着眼点、判定基準のポイント、それらに所以する全体の総合判定にもやや自信が持てない、またそれらに起因する不安があるのは当然でしょう。従って本人の自信と何人にも説明できる審判になって頂く為に、「目合わせ試験」を行い、「同一の目」、「同一の動き」、「同一の心」を会得して頂くことになりました。やがてこの基本動作一級審判検定に合格するということは、大きな自信となるでしょう。




基本動作一級審判検定は、すべて田邊会長が審査しているのですか?
目合わせ試験ということですが、それはどのような試験ですか?


  基本動作は他の打突競技と違い、試合中に選手も監督も異議申し立てができません。打突競技では判定に対して選手が挙手をして異議を申し立てする事ができます。そして検査役と審判との合議制で多数決判定が行われるという至極公平な試合運びが成されますが、基本動作ではそれらの過程がありません。その分審判の責任は重いわけです。
  どれを基準とするかはなかなか難しい事ではありますが、創始者として基本動作を作り、初期から40年以上指導し続けて来た私の全体責任でしょう。私自身も再勉強のつもりで皆さんと共に研鑽努力していくつもりです。どうぞ一緒に頑張りましょう。

  目合わせによる試験方法を具体的に示すと、3段階に実技試験が行われます。

  • 1段階目は、段級不問でランダムに赤白に分かれた10組の基本動作の試合を行い、紙上でその試合を判定します。一緒に私も判定します。
    その判定結果を採点して返し、細かく分析、説明をします。同時に両者の段位級位の基準も説明します。そして2段階目に移ります。

  • 2段階目は、1回目とは別の年齢の似かよった選手にお願いし、同様に私も判定します。そして結果を集計し、1段階目同様に皆さんに分かり易く長所短所を分解、分析、説明し、段位級位の審査基準も説明します。

  • 3段階目は、今まで行った選手の中から同段位、同級位または同じレベルの選手をピックアップして、細部の着眼点に主眼を置き判定します。この3段階目では、各地区大会や日本選手権大会等のベストクラス同士となりますので黒白つけるのはかなり至難ではありましょうが、これが見抜けなければ1級審判とは言えないでしょう。

  現在、基本動作一級審判の資格を取得するには、目合わせ試験では100点満点というのが良い訳ですが、若干微妙な誤差を考慮しほぼ80%位で良いでしょう。ただ3回(追試も含めて)とも80点ですと合計240点となりますが、もう一段階上の250点ぐらいが妥当かな。 1回ではなかなか合格しなくても、段階的に目合わせをして徐々に目が出来てくれば自信のついた審判ができるはずです。

  平素の皆さんの練習の糧となるよう一言いえば、基本動作とは、手の位置が多少、上過ぎるとか、足の先が多少横を向いるとか、そう言った部分的なもので他の全てを否定するような考え方をしていると何時までも良い審判はできません。後からでも修正の効く箇所を以て全てを判断してはいけません。木を見て森を見ずという言葉通りです。その選手が全体から醸し出す資質というようなものをも見出さなくては真の目利きと言えません。これは何の世界でも同じでしょう。そこを見誤ると全てが間違ってしまいます。それを踏まえた上で、「現時点で完成度が高い方」を選ぶわけです。

  よく、きちんと型通りに淡々と演武するが気迫に欠ける基本動作と、型破りでも元気があり、気迫がある基本動作とどっちが良いかと質問を受けます。これはどっちも悪い。




基本動作一級審判員を受験するには、やはり資格が必要なのですか?


  基本動作一級審判の検定試験は、18才以上であれば従来のように資格は問いません。インストラクター以外でも、子供達のご父兄でも自信を付けて受験して下さい。野球でも4番バッターやピッチャーでなくとも審判ができますし、また力士でなくとも行司ができますね。勿論、打突競技の審判はそう言う訳にはいきませんが、基本動作はその辺の判断ができればどなたでも資格を与えるつもりです。
  また1度合格し、基本動作一級審判員の資格を取得した人も「目合わせ」勉強会に暫時出席し、常に勉強して貰いたいと思います。

  既に、先の5月20日に開催されました2007年度第33回全国少年少女選手権大会の基本動作決勝は基本動作1級審判員のみで審判、また6月24日に開催されます第33回全日本選手権大会からは、基本動作1級審判員のみで審判します。

  各支部講習会において、基本動作一級審判検定の実施を希望する主催者は、本部のスケジュールの調整も必要ですので、早めに協会本部へご連絡下さい。

関連記事 [基本動作審判 一級検定について]
関連記事 [段級、称号、インストラクター・師範・師範代、審判 合格者一覧]

第32回世界選手権大会 開会式 基本動作演武 岩田健吾君(高知県)



ありがとうございました。
次回のインタビューもお楽しみに!

前号へ 次号へ

また、会長にお聞きしたい事があれば[ メールマガジン、お問合わせページ ]からお送り下さい!

ブラウザーを閉じる